春から夏へ、重ねていた服を一枚ずつ脱いでいく。肌に触れる空気が変わり、気持ちも少し軽くなって外へ出かけたくなる——。「ボッテガ・ヴェネタ(BOTTEGA VENETA)」の2027年サマーコレクションで、ルイーズ・トロッター(Louise Trotter)が捉えたのは、そんな季節の変わり目に訪れる身体と心の変化だ。精緻なテーラリングやレザーの加工技術を、風が抜けるシルエットや動きのある装飾へと展開。ブランドの手仕事を通して、夏を待つポジティブな気分を表現した。 このコンテンツは FASHIONSNAP が配信しています。
トロッターにとって、ボッテガ・ヴェネタでの3回目のショー。ミラノで季節をひと巡り経験したことが、今季の出発点となった。冬の身体を守る装いから、春、そして夏へ。「包み込むことから、解き放つことへ」という変化が、服の重なりや素材の軽さに顕著に表れている。
幕開けには、白のシャツドレスにベージュのロングコートを重ねたルックが登場。首元からはマクラメのレースが覗く。黒のジャケットも、肩の輪郭とウエストのラインはありながら、柔らかく生地感たっぷりのパンツを合わせ、続く軽快なルックの方向性を決めた。


特に目を引くのは、身体にゆとりを持たせたテーラリングと、軽くしなやかなレザーだ。トレンチコートやレザーのアウターも身体を締めつけないシルエットで、素材の持つ硬質さではなく、布のような柔らかさを感じさせる。手をポケットに入れたモデルたちの姿も含めて、丁寧に作られた服を普段のまま着る感覚がある。身体を覆いながらも、風が通り抜けるように見えるシルエットが、今季の開放感を印象づける。



序盤の白、ベージュ、黒から、やがてピンクやイエロー、パープルの彩りが加わる。ピンクのトップスにはイエローのパンツ、パープルのジャケットには淡いピンクのパンツ。親しみのあるシャツやテーラリングを、色の組み合わせで軽快に見せた。



季節の移ろいは、服の表面にも表れている。花柄のセットアップでは、細い糸状のフリンジが長く垂れ、束になって丸みのあるスカートを形作り、歩くたび弾けるように表情を変える。イエローのシャツに合わせたスカートも、裾を内側へ巻き込むようなボリュームが特徴だ。装飾を加えるだけでなく、その動きや集まり方によって見え方や、シルエットまでも変化する。




花の表現にも立体感を加え、視覚的な奥行きを生み出した。細かな編みを複雑に縫い上げた薄手の白のニットドレスの胸元には赤い花が咲き、別の花に覆われたドレスでは、ラバー素材が一部混ざり、不規則な揺れをルックに与えた。レザーで作られたフラワーコサージュは、ブランドが得意とする素材で、植物の柔らかな質感を表現。花が開き、季節が移ろっていくイメージが、クラフトを通して表現されていく。





ブランドの中核にあるイントレチャートは、今季も重要な役割を担う。レザーの表面だけに収まらず、ラフィアやマクラメ、透かし編み、フリンジへと表現を広げ、隙間や毛羽立ち、不揃いな端にも手仕事の痕跡が残る。
白い編み地のトップスには、密度の異なる編み目が混在。レザーとラフィアを使ったバッグや帽子も、素材の質感を残した仕上がりが印象的だった。


コレクションノートでは、手仕事に宿る知性や感情に加え、作り手の所作が生む不完全さまで、目に見える形で残すと説明している。ここでの「不完全さ」は、技術の欠如や手間を省くことではなく、クラフトマンシップをもってこそ実現できる遊び心のある表現だ。


ショー会場にも、同じ考え方が貫かれていた。客席に置かれたのは、アーティストのイリヤ・ゴールドマン・グービン(Illya Goldman Gubin)による「Karton Hocker」。自らの身体で抱え込み、押しつぶした段ボール箱を原型とし、樹脂でコーティングしたスツールだ(販売は現時点で未定)。組み合わされた箱のふたはイントレチャートを思わせ、表面のしわやへこみには、身体を使って形を変えた痕跡が残る。
招待状のポスターにも、グービンやブランドで働く人々が実際に手を加え、一枚ずつしわをつけた。会場では席にひとつずつ手作業で仕立てたレザーの花を配置。チューリップ、シャクヤク、ユリといった花々が、ショーに先立って季節の高揚感を伝えていた。
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ショー前にはフロリアン・ヘッカー(Florian Hecker)の音響作品が空間を満たし、本編にはマーク・レッキー(Mark Leckey)のサウンドトラックが添えられ、リズミカルな音楽は観客の身体を揺らした。異なる作家や表現を組み合わせることも、ボッテガ・ヴェネタにとっては「編む」という行為の延長にあるのだ。
服も空間も、緻密な仕事を幾重にも重ねながら、受け取る側には軽やかさを感じさせる。今季のボッテガ・ヴェネタは、重厚さに結びつきやすいレザーやクラフトの印象を、風を含む服へと変えた。素材を薄くし、編み目をほぐし、裾を遊ばせる。その工夫の積み重ねが、まとうことの喜びを感じさせ、外へ出かけたくなるワードローブを作っていた。
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